ここ2、3年、不動産業界では、研修や勉強会のテーマとして、相続問題、空き家問題、空き家対策、中古住宅について取り上げられることが大変多くなっています。
最近では当社にも相続絡みの案件の相談が増えてきています。特に底地(貸宅地)や共有名義不動産の共有持分のみの売却の相談などです。
日本では土地と建物がそれぞれ別の権利として登記され、所有権も別の名義になっている場合があります。土地を所有している地主がいて、その土地の上に借地人が自身の名義の建物を保有し地主に地代を支払うという借地権もその形態のひとつです。
ただ、この形態は後々いろいろ問題を抱えることになります。
相続時の問題点~借地人側~
建物を所有している借地人側の問題として、将来ご自身が亡くなりお子様が引き続き同じところに住む場合はともかく、お子様が別に住んでおられる場合でも建物は相続することになります。
誰も住んでいない建物に対して地代を払わないといけないですし、換価しようにも今どき“借地権付建物”を買う人はおりません。地主に返還する場合には更地にして返還しないといけないので、最終的には費用負担して建物を解体することになります。
引き続き住む場合でも建物老朽化にともなう建て替えの際に「建替え承諾料」がかかったり、売却時(売却は非常に難しいですが)には「譲渡承諾料」がかかったり、どちらにしても出費は不可避です。
相続時の問題点~地主側~
底地を所有している地主側の問題としては、土地を所有していたとしてもその土地には“借地権”という権利が付いており、ややこしい話ですが権利の割合としても一般的には借地権の割合の方が多くなります。
昔から住んでおられる借地人に対してはほとんどの場合、法律上強制的に立退いてもらうことはできませんので、そういった底地を所有している場合、換価しようとしても一般の方は買えません。不動産業者が買い取るにしても、地代や借地権割合等の関係でかなり低い金額になってしまいます。
土地を個人名義で所有していると、相続のときにも厄介です。実際には買い手が付かないような土地(底地)でも不動産としての評価がついていますので、相続時には相続税もかかります。相続財産のうち不動産はかなりの割合を占めます。平成27年の相続税非課税枠の変更により少しの土地でも相続税がかかる可能性がありますが、特に広い土地で所有していると現金がなければ税金は納められません。土地に他人名義の建物が存在する“底地”では物納も認められません。
共有名義不動産の場合はさらに“ややこしい”
底地を所有している側も建物を所有している側も、相続人が共有で所有することになった場合はもっと“ややこしく”なります。
よほどの資産家の方以外、ほとんどの方は不動産に関して相続前の対策はされておりません。相続発生後、司法書士が当たり前のように法定相続分として“共有持分”で登記してしまいます。これは問題を先送りにしているだけで、将来もっと厄介な問題になります。
本来は相続が発生する前からの対策が必要です。