今年2月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が公布されました。
現在国内では、空家が800万戸以上あると言われており、年々その数も増加しています。不動産業界における団体の講習や研修でも、近年はこのテーマが取り上げられることがかなりあります。空家問題の原因は色々あると思いますが、まずは経済の原則である需要と供給のバランスです。昔は人口増に伴い需要がある中で住宅も増えてきたわけですが、人口が減っている今の日本の状況下でも相当数の新築住宅が建っているので、はっきり言って供給過多です。同じように人口が減っている先進国もありますが、欧米の場合、新築住宅よりも中古住宅の売買戸数の方がはるかに多く資産価値も落ちないので、日本でも中古住宅に価値を見出せる環境が必要なのでしょう。
一般の方が住むような木造住宅の場合、通常20年くらいで建物の価値は無くなると言われていますが、これは会計上の償却年数として「木造住宅の耐用年数22年」となっていることから、建物の使用限界も築20年くらいと誤解され、“新築住宅よりも中古住宅は価値が下がってしまっている”というイメージが消費者側にあるように思います。実際、不動産を扱っていると価格が落ちていない物件もたまにありますが(物件によっては販売価格よりも現在の相場の方が高い築20年以上の区分所有マンションもあります)、建物の価値というよりもあくまで土地(場所)の価値で判断されているようです。まあ、建物に関しては、いくら良い(費用が高い)建物でも時代によって流行もあり、それが価格に反映されてしまうので何とも言えませんが・・・。
これまで中古住宅取引の活性化といっても、構造・性能・品質に対する不安の解消ということに重点が置かれており、インスペクション(建物診断)の普及やリフォームの促進、より詳しい調査の要求、瑕疵担保責任の明確化等、消費者それも買主の目から見た目線が中心でした。そのこと自体は大事なことですが、これだけでは売主(一般の方や不動産業者)、仲介業者に責任とリスクだけがかかってくるので、どうしても不動産業者は“儲かってリスクも少ない”新築の市場に流れていきます。言い方は悪いかもしれませんが、中古住宅の市場でも不動産業者が“儲かる”仕組みを考えないと、結果的に消費者もそちらに目が向かないし、空家に関して問題を抱えている一般の方への解決策も限られてしまいます。
徐々にですが、最近ではこちら側(不動産業者)の目線からでも頷ける様な施策が増えてきたように思えます。今回の「空家等対策の推進に関する特別措置法」もそうですが、税金の軽減や規制の緩和等、政策による力が一番強い流れになります。
当社にも空家で困っておられる一般の方からの相談もありますので、空家問題に対する解決方法を探求していかないといけません。