最近の話ですが・・・

高齢の女性(本人・現在90歳)が特別養護老人ホームで10年くらい寝たきりの状態にあります。本人が独身だったので、女性の弟が成年後見人になって本人の財産管理や定期的な裁判所への書類提出・報告を行ってきました。ところが、最近になって裁判所から「ご本人の資産状況なら“成年後見監督人”を付けて下さい」と言われました。以前から成年後見監督人の制度はありますが、親族間に意見の対立がある場合や資産の額・種類が多いなどの条件にあてはまる場合につくのですが、今回のケースでは成年後見人を決める際もそれ以降も親族間で意見の対立もないですし資産に関しても大きな変化があったわけでもありません。本人の資産額が条件の場合、以前は数千万円~1億円以上の金額だったのが、今は1,000万円くらいでも成年後見監督人が付くようになっているそうです。問題は、成年後見監督人が付くと(本人の状況により変わりますが)毎月少なくても数万円の報酬を支払わなくてはなりません。今回のように親族の成年後見人が報告書や書類の作成も含めて全て実際の業務をして、成年後見監督人は裁判所への報告(年1回)の際のチェックくらい・・・。それで年間数十万円!しかも報酬額を事前に聞いても教えてもらえない上に、決まったらほぼ強制です。「報酬は本人の資産によって変わる」という事ですが、作業量で変わるのならわかりますが、本人の資産によって変わるというのは理解できません。“財産保護”と言いながら資産のある者から合法的に、食いつぶさない程度に搾取するということでしょうか・・・。また成年後見監督人付与の判断基準もあいまいで、裁判所へきっちりした説明を求めてもすべて「そうなっているから」「裁判所が判断する」という答えだけです。裁判所側の言い分としては、①弁護士や司法書士など資格のある者以外(親族の方など)が成年後見人になった場合の不正な横領問題が増えている事、②成年後見人から裁判所へ提出される報告のチェックが裁判所側で手に負えないくらい増えてきている。ということですが、①に関しては、成年後見監督人が付いても不正な横領は防ぐことはできませんし、資格のある者が不正に横領した事件もあります。②についても裁判所の手に負えないなら、裁判所から報酬を支払うのが筋だと思います。

最終的には成年後見人は“弁護士か司法書士に限る”ということなのでしょうか?「不遡及の原則」を無視した“過払い金訴訟”もそうですが、これでは弁護士や司法書士を儲けさせるために作られた制度としか思えません。裁判所の方でも「納得されない方も結構いらっしゃいます」と言っていましたが、この制度のままで納得される方のほうが少ないでしょう。今はあまり知らない方も多いようですが後々問題になる制度のように思えます。

最近は、不動産業界でも任意後見や家族信託等のセミナーも増えてきました。これからは、今回のケースのように本人に成年後見人が付いてしまって選択肢がない状態になる前に、資産保護の方法を考えていかないといけません。以前はかなりの資産家だけの世界の話でしたが、超高齢社会のうえに相続税の基準も変わり今はもっと身近な話になってきています。